「介護の可能性を広げる生産性向上セミナー」で、インターンは見た!

「介護の可能性を広げる生産性向上セミナー」で、インターンは見た!
2020.02.21

私は介護現場や在宅における介護・看護の在り方に興味があり、現在TRAPEでインターンしています。そのなかで、先日鎌田さんが講師を務める「介護の可能性を広げる生産性向上セミナー」が介護福祉施設の管理者を対象に開催され、そこに私は、インターン生として、突撃体験をしてきました。

その際、自分が今まで抱いてきた「介護現場のイメージ」と「介護現場の実際」にギャップがあることに気が付き、大変衝撃を受けました。それと同時に、このままでは介護現場が成り立たなくなるという「危機感」も感じました。

なぜ、このギャップや危機感が生まれているのか。このギャップを埋めるためにはどうしたらよいのか、自分なりに考えてみようと思います。

 

1、私の介護現場に対するイメージ

私は、週に1度ヘルパーとして、施設で働いています。そのため介護現場を全く知らないというわけではありません。そんな私が実際に介護現場に抱いていたイメージや疑問は以下の通りです。

介護士の仕事は体力的にすごく大変な仕事ですが、利用者さんらしい生活を支えるやりがいのある仕事です。

なぜ働いているスタッフが「働きがい」をもつことができていないのか?

 

私は疑問に感じていました。。。

 

私は理由として、業務量が多く忙しいということを挙げました。しかし、その「忙しさ」を改善する方法はあると考えていました。

例えば、私が働いている特別養護老人ホームでは、介護士でなくてもできる洗濯・掃除の業務が多く、実際に介護士がすべきケアに手が回っていませんでした。それでは本来の仕事ができないため、「介護士とは別に清掃・洗濯を担当する職種を設け、作業を分担すること」や「掃除する場所を曜日で割りふる」といった改善策が提案できます。このように作業を効率化させれば、スタッフの忙しさは軽減され、働きがいのある職場に変わると思っていました。

 

私が、介護現場で見つけることのできる「改善策」はほんの一部です。そのため、他にもどんな改善策があるのか。また、介護現場の「可能性」に対する、いろいろな考えに触れられることを楽しみに「介護の可能性を広げる生産性向上セミナー」で突撃体験させていただきました。

 

2、講義で気付けたこと

「介護の可能性を広げる生産性向上セミナー」は講義とワークショップの2部で構成されていました。

まず、講義を聞いて驚いたことは、「生産性向上」の私の解釈が間違っていたことでした。講義を聞く前は、「生産性向上」とは業務改善を行い、効率よく仕事を行えるようにすることだと思っていました。

しかし、実際の「生産性向上」は、人々の働きがいを向上させることでした。

 

スタッフの働きがい・生きがいが向上することで、介護サービスの価値が向上し、生産性が向上する。業務改善はあくまで働きがいを向上させるためのプロセスであるということを初めて知りました。

また、自分が挙げた改善策を提案するプロセスも間違えていたと気づきました。

私が先程挙げた例でいうと、現場で本当に困っていることが「掃除や洗濯よりも介護ケアをやりたい!」「毎日の掃除でどこをやっているかわからなくて、掃除できていないところがある!」だった場合、改善策はそれで正しかったかもしれません。

しかし、介護ケアに手が回っていない原因が「介護スタッフの業務分担ができていないこと」や「指示を出すべきリーダーが誰よりも動いている」だったら、私の考えた改善策は的外れで、意味のないものになっていたと思います。

大切なのは「改善策」ではなく、現場で実際に起こっている課題に対して、それがなぜ生じているのかを考え、それを断ち切るための改善策を考えること

 

このことに気づくことができて本当に良かったです。私が当初、この講義で求めていたのは「改善策」であり、改善策があれば、現場の働きがいが向上すると勘違いしていたからです。

 

具体的な例をあげてみます。実際現場でおきている課題が「ケアマネは書類業務が多く、後回しにしてしまい、月末がとっても忙しい」だった場合、「ICTツールとして音声入力を導入する」という改善策が提案されました。

導入当初は、慣れない業務ということもあり、いきなり全員で行うことは不可能でしたが、興味のある1人から始めてみることで輪が広がり、結果として、書類業務を大幅に効率化でき、削減した時間をケアマネとして大切にしたい「多職種連携や利用者との時間」に充てることができたという事例です。

この事例から、「現場にある解決したい課題」をベースに提案された「改善策」だから、成功したということと、いきなり全員で取り組むのではなく、興味のある人から始めたらいいということを学ぶことができました。

 

おそらく、現場にはこのような具体的な課題がたくさん転がっていると思います。それら1つ1つの課題を明確化し、改善にむかってチャレンジを積み重ねていくことで、介護現場の働きがいはまだまだ向上できそう!と自分が感じていた以上に介護現場への「可能性」に気づくことができました。

3、実際のワークショップで感じたこと

講義後、私は私が思いつかないような具体的な課題や、実際に現場で生かせそうな改善策が聞けるのではないか?と、ワークショップを楽しみにしていました。

今回のワークショップは、5,6人のグループに分かれて行われました。私は、それぞれのグループを回りながら、質問をしたり、意見を聞いたりするなどして、参加させていただきました。

ワークショップでは、抱えている現場の課題を1つ(「リーダーが忙しすぎる」「残業が多い」など)挙げ、その課題を中心とし、原因と悪影響を書き広げていくという「因果関係図」が用いられていました。

 

私は、具体的な課題やその原因などに加え、「この課題にはこんな改善策があるのでは?」という実際に現場で生かすことのできるアイディアで議論が白熱すると思っていました!

しかし、実際には「現場の課題」がほとんど上がってこなかったのです、、、

 

「現場の課題」が挙げられたとしても、「忙しい」などといった抽象的なもので、その忙しさが、なにから生じているのか、忙しさが生じることで具体的に現場はどうなっているのか。といった具体的な話は出てきませんでした。

それに私はショックを受けました。現場を少ししか知らない私ですら、講義を聞いて、今より働きがいのある現場を作ることができる!と大きな可能性を感じたのです。同じ講義を聞いていたはずなのに、なぜこんなに温度差があるのか?なぜ議論が進まないのか?大変疑問に感じました。

介護現場で管理職をしているにも関わらず、なぜ、「現場の課題」と「課題の原因」がわからなかったのか、、、

管理者と現場のスタッフの思いの間に大きな「ズレ」が生じているから

 

だと私は思います。

 

おそらく、この記事を読んでいる現場スタッフの方は、今抱えている現場の課題は何だと思う?と尋ねられたら、たくさんの具体的な課題が出てくると思います。

・おむつ交換にいくための台車が1台しかなく、複数人で回る場合は、1人終わるたびにその台車を探さないといけないから時間がかかる

・食事形態と顔を覚えている常勤のスタッフが配膳の時間に休憩に入っていて、配膳はいちいち非常勤のスタッフが紙を見ながら行わないといけないから、間違いも起こるし、食事までに時間がかかる

など、私も課題を挙げてみました。

 

現在、介護福祉施設で働かれている管理職の方は、元々現場で働かれていたスタッフさんで、現場で長い間働いてきたため、「現場のことはよくわかる」という自負があると思います。しかし、現場はスタッフがいて、入居者さんがいて、日に日に変化します。わかったつもりでいる現場が知らないうちに状況が大きく変わり、「知っているつもり」になってしまい、下の図のような「ズレ」が生じてしまっているのではないか?と私は思いました。

管理職も現場のスタッフも施設のこと考え、よりよいものにしようとしています。お互いによりよいものにしようと思っているのに、このようなズレが生じていると、すごくもったいないです。このズレの積み重なりがストレスとなり、働きがいのない職場を作り上げてしまっているのだと思います。

私は、この「ズレ」を解消する方法は1つしかないと思います。

それは「コミュニケーション」です!

大切なのはコミュニケーションです!

 

現場スタッフと管理職が話すことで、スタッフは管理職の仕事内容を知ることができ、管理職は現場が自分たちの知っている現場から変わってきていることに気づくことができると思います。

「忙しい」はコミュニケーションをとらない理由にはなりません!

 

忙しい中でも、時間を見つけてコミュニケーションをとり、お互いが抱えている課題を共有し、一緒に改善策を考えることで、その忙しさが軽減する日が来ると私は信じています。

 

おそらく、今回参加された管理職の方の多くは、実際に「生産性向上」のための「改善策」を聞くためにセミナーに参加したのだと思います。

しかし、生産性向上とは、単に人材不足を解消することや、いかに少ない人数で効率よく仕事をこなすかではありませんでした。コミュニケーションをとり、現場で生じている課題を共に考え、改善策を共に実行してみる。そうすることで、今まで生じていた「ズレ」がなくなり、「働きがいが向上」つまり、「生産性が向上」するのだと気づくことができました。

スタッフとコミュニケーションをとり、まず自分から行動を起こしてみる!

 

これが一番大切です。

 

4、実際に行動に起こしてみる

具体的にどのような行動を起こせばいいのか、私なりに考えてみました。

⑴現場で働くスタッフの方に、仕事で日頃感じている疑問や解決したいこと、気付いたことを「気づきシート」に書いてもらう

→日頃感じていることを管理職の方に直接伝えることは難しいです。紙に書くことで、本当の思いを書くことができ、管理職の方も実際の現場の声を知ることができると思います。

⑵小さなことでも気が付いたら声をかけ、意見を挙げたスタッフをほめる

→私は褒められるともっと頑張ろう!とやる気がでます。おそらくスタッフの方もそうだと思います。ほめることで、「小さなことでもほめてくれるから、小さなことから頑張ろう!」「感じたことを素直伝えてもいいんだ!」といったように、気持ちに変化が表れます。そうすることで、現場からの声が上がりやすくなり、スタッフのやる気も向上すると思います。

 

いいアイディアだと思いませんか?

私の介護現場における理想は、「介護現場におけるスタッフ、リーダー、管理職がそれぞれコミュニケーションをとり、よりよいケアと働きがいのある職場を作るために取り組むことができる」<ということです。

 

私が抱いている「介護現場の理想」は、今働いているスタッフの方からみれば、現場を知らないから言える理想だと思われるかもしれません。

介護現場はまだまだ「可能性」を秘めている

 

そんなふうに思い、私の考えも間違っていないのではないかと感じました。

 

今後、介護福祉の需要が高まる中で、新しい世代が介護という職業に魅力を感じ、今働いている世代が介護という仕事に働きがいを感じることができるように、今からできることに一緒に取り組んでいきましょう。

 

主な事業実績先
厚生労働省
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