瀬戸内市の「短期集中モデル事業(リエイブルメント)構築」と鏡野町の「訪問サービス可視化フローチャート」が拓く介護予防の未来
高齢者の増加、介護人材の不足、介護給付費の増大——こうした地域課題が各地で顕在化する中、「何から手をつければいいかわからない」と、介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)の設計や見直しに踏み出せない市町村は少なくありません。
弊社は令和5年度より岡山県から本事業を受託し、伴走支援を実施してきました。令和7年度に支援を行った岡山県内の2市町でも、課題が山積する中で議論が進まず、事業の見直しが停滞していました。
しかし今回、課題の整理・関係者との対話・小さなアクションの積み重ねを通じて、市町村が主体的に動き出す変化が生まれました。本リリースでは、そのプロセスと成果をご紹介します。
【市町からの総合事業に対する課題の声】
令和7年度の伴走支援において、岡山県内の市町村担当者から次のような声が聞かれました。
- 「総合事業がうまく言っていない」
- 「自分たちの地域の課題が分からない」
- 「総合事業の見直しをしないといけないが、何から取り組めばよいのか分からない」
- 「フレイル状態にある人(要支援者や事業対象者)が、サービスから卒業できない」
- 「担い手やボランティアが不足している」
総合事業は平成27年の制度創設から約10年が経過しました。
総合事業では、市町村が中心となり、自分たちの地域に住む高齢者にとってどのようにすれば、その人らしく暮らし続けることができるのかを考え、地域の実情に応じた柔軟な事業を展開していくことが求められています。しかし、地域の実情に応じた事業設計や運用、関係者間の連携が十分に機能していないケースも多く、市町村の担当者から上記のような課題の声が多く聞かれています。
各自治体は試行錯誤を重ねながら取組を進めているものの、最適な解決策や方向性を見出すことが難しく、多くの自治体が課題を抱えたまま模索しているのが現状です。
【岡山県介護予防に係る市町村支援アドバイザー派遣事業とは】
市町村ごとに、人口規模・高齢化率・抱える課題は大きく異なります。そのため本事業では、画一的な研修ではなく、各市町村の課題に応じた個別の伴走支援を行います。
市町村が主体となって課題を整理し、解決へ向けて自ら動き出す。そのプロセスを支えることが、本事業の最大の特徴です。関係者が対話を重ねながら現状と向き合い、事業を共に再構築する経験を通じて、自律的な取り組みを継続できる体制づくりを目指します。
【TRAPEの市町村の支援における特徴】
多くの自治体では、総合事業の課題が複雑に絡み合い、「何が課題なのか分からない」、「どこから手をつければよいのか分からない」という状況に陥りがちです。
そこで本事業では、弊社が作成した「地域づくり支援ハンドブック」を活用し、まず関係者間で現状や課題について対話を重ね、それぞれの認識や思いを言語化・共有することから始めます。

【TRAPEの支援における3つのポイントと伴走プロセス】
地域づくりや介護予防の推進において、主役は市町村の皆さまです。TRAPEはその伴走支援者として、次の3つのポイントを大切にしています。
① ビジョン・目的が最重要
「どうすればわがまちの高齢者に自分らしい暮らしを続けてもらえるか」という問いを起点に、取り組みの方向性を定めます。
② “対話”が重要
関係者がつながり、知り、新たな関係が生まれる——対話のサイクルが地域の力を引き出します。
③ “経験”が重要
経験→内省→自分のものにする→実際に試すという学習サイクルを通じて、取り組みを着実に根付かせます。

支援では、すぐに事業の見直しに着手するのではなく、過去・現在・未来という時間軸で対話を重ねながら中長期のロードマップを策定します。
現状を把握し、ゴールを描き、そのギャップを埋める段階的な目標とスモールステップを設定。トライ&エラーを繰り返しながら、関係者全員が”わがまちのストーリー”として語れるロードマップを共に作り上げていきます。

【対象市町村2市町の取り組みテーマと成果(一部)
瀬戸内市の取り組み
「足踏み状態からの脱却」
-関係者で作り上げた短期集中事業(リエイブルメント)の構築-
【取り組み開始前の課題】
- 総合事業の見直しの必要性は理解しているが、課題が山積みで何から取り組めばいいかわからず、足踏みが続いていた
- 関係者間で課題や目指す方向性の共有ができていなかった
【取り組み内容】
- 現状課題の整理の実施、データを含めた可視化
- ありたい姿(関係者の共通ビジョン)の明確化
- 短期集中方サービスの設計とモデル事業案の作成
- モデル事業実施に向けて、モデル事業所、地域包括支援センター(プランナー)も巻き込んだ目線合わせの実施
【取り組みの成果】
- 瀬戸内市の課題、ありたい姿をもとに、短期集中サービス(リエイブルメント)のモデル事業案を作成することができた
- 今後の方向性が明確になり、次年度以降、短期集中事業を始めとする事業の見直しに自信を持って取り組めるようになった
- 今回の取り組みを通してより行政、地域包括支援センター、生活支援コーディネーターで総合事業を一緒によりよいものにしていくチームが出来上がった
- モデル事業スタートに向けてモデル事業所や地域包括支援センターのケアマネジャーもチームに加わった


【瀬戸内市の声や感想(一部掲載)】
- 「何から取り組めばよいかわからない状態だったが、課題整理とモデル事業の検討を通じて、今後の方向性が明確になった」
- 「関係者が同じ方向を向くチームになれた。このメンバーであれば、今後も話し合いながら進めていけると感じている」
- 「対象者は高齢者だから徐々に弱っていくのが普通だと思っていたが、元気になれる可能性があると思えるようになった。これから実践に取り組んでいきたい」
- 「これまでは体操教室など決まった場だけが居場所だと考えていたが、本人が好きな小さな場所も社会資源であると気づくことができた」
鏡野町の取り組み
「絡まりあった課題が解け、今後の道筋とチームができた」
-生活支援、訪問サービスの整理と見直しへの取り組み-
【取り組み前の課題】
生活応援隊(ボランティア)、てごなかま(ボランティア)、ミニシルバー人材センター、ヘルサポ(訪問A)など、複数の訪問系・生活支援サービスが存在していたが、担い手不足や活動内容の重複といった課題が生じていた 事業の見直しや統合の必要性は認識されていたものの、関係者間の話し合いでは意見がまとまらず、議論が堂々巡りとなっていた その結果、具体的な見直しや改善に向けた検討が停滞していた
【取り組み内容】
- 現状と課題の整理の実施
- 関係者それぞれの思いの共有
- ありたい姿(関係者の共通ビジョン)の明確化
- 今後の取り組みに向けた方向性の共有と段階的な目標設定
- スモールステップの取り組みの実施(フローチャートの作成)
- 実施してみての振り返りとブラッシュアップ
【取り組みの成果】
- 堂々巡りで進まなかったそれぞれの事業の見直しが進み始めた
- 各サービスの区分けが整理され、利用者や担い手にも分かりやすく伝えられるようになった
- サービスの区分けが明確になったことで、料金の不均衡や担い手不足など、今後取組むべき課題と方向性が明確になった
- 事業をともに考え、見直していく関係者のチームが形成された


【鏡野町の声や感想(一部掲載)】
- 議論が停滞していたが、関係者で対話し絡まりあった課題を紐解くことができた
- それぞれの関係者の課題感や思いも共有することでチームワークが生まれた。この会議は本当の楽しかった
- フローチャートができたことで、地域包括支援センター内でも共通認識が醸成され、住民にもわかりやすく制度や内容を伝えられるようになった
- フローチャートとして可視化しることで、料金体系などの新たな課題も見えてきたため、今後は社協・包括・行政が協働して解決策を検討していきたい
【岡山県様からのコメント】
岡山県こども・福祉部長寿社会課
介護保険推進班
副参事 角紗綾果様

令和7年度は「地域のサービス資源の人材不足や利用実態の変化を踏まえて事業を見直そうとしてきたが、結論がでない」「総合事業を見直したいが、関係者間で共通認識が持てずどこから着手していいかわからない」とお悩みの2市町と取組を進めました。
その結果、「サービスを必要とする人に届けるためのニーズに応じたサービスのフローチャートの作成」「短期集中サービスのモデル事業の構築」、さらに次年度の事業の検証などの予定も立てることができました。
事業の見直しは一度やって終わりではありません。何歳になってもいきいきと生活できる社会の実現に向けて、今後も市町村とともに挑戦と検証を重ねてまいります。