都道府県介護現場革新会議・介護生産性向上総合相談センター(ワンストップ窓口)を自治体向けに詳しく解説 第3回

都道府県介護現場革新会議・介護生産性向上総合相談センター(ワンストップ窓口)を自治体向けに詳しく解説 第3回

「介護現場革新会議」「介護生産性向上総合相談センター(ワンストップ窓口)」について、TRAPE的切り口でわかりやすく解説を行います。

本記事では第3回として、「介護生産性総合相談センター(ワンストップ窓口)とは何なのか?」というテーマについて解説いたします。

第1回「生産性向上の取り組みは、介護の価値を向上するための手段」
第2回「都道府県 介護現場革新会議とは何なのか?」
については、こちらをご覧ください。

介護生産性総合相談センター(ワンストップ窓口)とは

介護生産性総合相談センター(以下ワンストップ窓口)とは、都道府県 介護現場革新会議(以下協議体)で示されたビジョンや戦略を具現化するために、戦術(具体的な手段や行動など)・計画(具体的なステップなど)を立てて実践する役割があります。さらに言うと、地域(都道府県下)における介護事業所各々の状況に合わせて、働く職員や利用者がウェルビーイングになるように、職場に余裕を生み出したり(生産性の向上)、職員の働きがいを向上させたり、良いケアを生み出したりする組織づくりを後押しする役割があるということです。

介護事業所の状況はさまざまですが、どんな介護事業所も取りこぼさないよう地域のアセット(資産)となるように、介護事業所の状況に合わせて変革の後押しができるようワンストップ窓口では多様なサポートメニュー(①〜⑧)が用意されています。

①相談受付
②介護ロボット・ICTの展示
③試用貸出
④研修会の実施
⑤伴走支援等
⑥生産性向上の関連情報の収集・提供
⑦事業の周知
⑧ネットワークの構築

これら①〜⑧を縦割りで運用してしまうと、介護事業所の体験価値は一定の範囲内に収まってしまいもったいないことになります。ここで重要な視点は①〜⑧を介護事業所の状況に応じて臨機応変かつ柔軟にデザインして提示、活用いただくということです。①〜⑧を1つ1つの事業としてこなすことを目的とするのではなく、ワンストップ窓口の役割である「介護事業所をウェルビーイング溢れる状態にする」ことを目的として、それを実現するために①〜⑧を手段として有機的に連動させていくということが重要となります。

介護事業所の状況に合わせた対応の流れ

介護事業所の状況に合わせたサポートメニュー例を通して実施流れについて解説します。

A: 介護事業所がどうして生産性向上の取り組みを行うべきかについて知らない

B: 生産性向上の取り組みの重要性について知っているが、どうやって行動を起こしていいかわからない

C: 生産性向上の取り組みの重要性について知っていて、何かしら行動を起こしたが途中で壁にあたり止まっている

D: 生産性向上の取り組みの重要性について知っていて、新たにテクノロジーを導入しようと思っているが、この後どのように取り組んでいけばいいか知りたい

E: 生産性向上の取り組みの重要性について知っていて、テクノロジーを導入したが、うまく活用できていない

F: 生産性向上の取り組みの重要性について知っていて、テクノロジーを活用できていて、もっと新しい価値を生み出したい

各サポートメニューの詳細

各サポートメニューの詳細について、それぞれ詳しく解説します。

⑦事業の周知

ワンストップ窓口の目的や役割そして介護事業所を後押しする多様なサービスメニューがあること、介護事業所の状況に合わせた中で活用できるということを広く知ってもらうことです。周知を行うチャネル(手段)としては、ホームページ、パンフレット、市町村とコラボレーションして関連事業の場を活用する、市町村が介護事業所に情報発信する連絡網を活用するなどさまざまな方法が想定できます。④研修会の案内も含まれます。

この後、④研修会の実施または①相談受付の提示となるでしょう。

④研修会の実施

⑦事業の周知等で研修会のご案内を行い、お申し込みをいただくことで実施に繋がります。研修会開催方法はいろいろなバージョンが考えられます。

「生産性向上ガイドライン」「介護ロボット・ICT導入の手引き」に合わせた取り組みを知らない方向けのビギナー編や「生産性向上ガイドライン」「介護ロボット・ICT導入の手引き」を知っているが、壁に当たってしまった方向けのフォローアップ編など事業所の状況に合わせた研修を行うのもいいでしょう。

ビギナー編では、なぜ介護事業所が生産性向上の取り組みを行わなければいけないのか、介護における生産性向上をどのように解釈すれば良いのか(何を目指し、行うことなのか)、具体的にどのように行なっていくといいのか、具体的事例、国の後押し施策の情報提供などをわかりやすくお届けすることが重要です。そして同時にこれらは「生産性向上ガイドライン」「介護ロボット・ICT導入の手引き」を活用して進めていきます。

また、経営者層、ミドルリーダー層、現場職員層と組織階層別の研修を行うことも1つの方法です。それぞれの層の課題感を共有し、イメージを深め、取り組みに向けて階層別の役割を意識しやすくなります。

💡 <One Point>
TRAPEは、2020年〜2023年の4年間連続で、厚生労働省が実施した生産性向上全国セミナーにて2,000事業所を超える全国の介護事業所の経営層・ミドルリーダー層の方々を対象に講師・ワークショップを担当してきました。
講演資料・講演動画はこちらです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-seisansei_seminar2023.html

①相談受付

介護事業所からいい組織を作るために壁にあたっていること、悩みなどの相談を受けます。生産性向上の取り組みは介護事業所の経営戦略上、優先順位が最も高い取り組みです。だからこそ経営のこと、人材育成のこと、テクノロジーのことなど多様な相談が寄せられることが想定されます。

相談者がみんな課題を整理できているわけではありません。むしろ課題だと述べていることでなく、真の課題は潜在化しているケースも多々あります。(まずはヒアリングを行い、潜在化している真の課題とは何かを一緒に明確にし、それについてアプローチを行った方が職場の可能性が生み出され、生産性向上などの取り組みがいい体験となり横展開していくということが多くあります)

相談受付で最も重要なことは、相談者の立場に立ち、一緒に課題を整理・解釈・Reデザインするという姿勢です。

💡 <One Point>
TRAPEは、2023年度青森県介護生産性総合相談センターの業務アドバイザー(外部委託)として窓口様とOne Teamで相談受付対応も行っています。 窓口様には独自の相談受付シート(窓口様が介護事業所に寄り添いながら的確にアセスメントしやすい仕様)をご提供しています。

窓口様が1次窓口となり、解決できることはそこで行い、課題の整理・解釈・Reデザインが必要なものはTRAPEへパスいただき、TRAPEが対応するという2段階で介護事業所の相談を課題から可能性に変える取り組みを行っています。

この後、事業所の状況に応じて、⑤伴走支援等、⑥生産性向上の関連情報の収集・提供、②介護ロボット・ICTの展示のメニューが提示されます。

⑤伴走支援等

窓口が実施する伴走支援事業は、ロボット相談窓口の伴走支援事業を参考にするとだいたい3事業所くらいを目安に実施するといいでしょう。

伴走支援とは、介護事業所の現状や目的に合わせて、「生産性向上ガイドライン」「介護ロボット・ICT導入の手引き」を活用できる外部アドバイザーが関わり、生産性向上や働きがい向上、いいケアの実現などの定量的・定性的成果を生み出し、その介護事業所がその後地域においてモデルとなり、これらの取り組みが横展開されることを目的とします。

💡 <One Point>
TRAPEは、2017年の生産性向上という言葉が介護業界で使われ出した黎明期から2023年まで毎年厚生労働省事業において、数多くの施設系サービス、居宅系サービスに対して伴走支援を行ってきました。2022年・2023年は全国の1/3のロボット相談窓口の業務アドバイザーとして、介護事業所の伴走支援を行ってきました。

⑥生産性向上の関連情報の収集・提供

市町村が独自で生産性向上に関する施策を実施することができるようになっているため、生産性向上におけるさまざまな情報(業務改善、マネジメント、ICT・ロボットなどのテクノロジー情報など)、生産性向上に関係する国の動向(制度改正や多様な施策)等を介護事業所に提供し、介護事業所が自らの状況に合わせて必要な情報にアクセスし、行動できるようにします。

また、地域の介護サービス事業所同士が、生産性向上関連の情報交換を行う場を設定したり、⑤伴走支援を受けたモデル事業所や先進的取り組みを行っている事業所など先輩事業所を含めたコミュニティづくりなども有効です。

💡 <One Point>
TRAPEは、山形市と包括連携協定を締結し「介護の職場」魅力・活力くるりんプロジェクト(生産性向上モデル事業)を実施しております。 その一環として2023年度事業では、介護事業所のくるりんコミュニティの構築を行っています。

②介護ロボット・ICTの展示

生産性向上の取り組みのイメージをさらに持ってもらう際、また課題が具現化してありたい姿を手に入れるための手段のレパートリーを持ちたい時など、介護事業所の状況に応じて介護ロボット・ICTの展示を訪れることは有効です。体験することで、これらの手段を用いるイメージを持って自分たちの職場のありたい姿を思い浮かべ、職員同士の対話が加速化することでしょう。

訪問者との対話を通して、訪問者の課題を整理・解釈・Reデザインすることで、活用場面を想定した体験の提供が可能となります。ここは①相談受付にも通ずるところがあります。

③試用貸出

①相談受付、②介護ロボット・ICTの展示、⑤伴走支援等、⑥生産性向上の関連情報の収集・提供を通して、生産性向上・働きがい向上・より良いケアの提供などを生み出すために、業務棚卸し(アナログ的な業務改善の取り組み)ができた段階で、介護ロボット・ICTなどのテクノロジー機器を活用体験してみて、自分たちの思い描く成果につながりそうか見立てを後押しする施策としてとても有効です。

この期間を経て、本格的にICT/ロボット補助金申請などテクノロジー機器への投資に進むことで、効果的な投資となりやすいわけです。

介護ロボット・ICTなどのテクノロジー機器を導入するときのとても重要なポイントは、業務棚卸し(アナログ的な業務改善の取り組み)をしっかりと行い、職員が業務に対する意味づけを行うことができ、テクノロジーを活用することによって手に入れたいありたい姿をイメージできている状況を生み出すことです。令和5年度秋の行政事業レビューにおいても委員からの質問に対して厚生労働省は「単に機械を導入するだけでは具体的な成果が出にくいことは承知している、テクノロジー機器の導入に至る前のプロセスや導入後の改善、定着に向けたプロセスが非常に大事である。」と述べています。(この発言は下記動画の22:11よりご確認いただけます)またこの中で、「だからこそ伴走支援をきめ細やかに行っていく必要がある」とも述べられています。

https://live.nicovideo.jp/watch/lv343119375

⑧ネットワークの構築

ワンストップ窓口が介護事業所に対する支援をより実態に即した実効性の高い内容とするために行うアップデートの取り組みです。

得た知見を他の窓口と共有したり、地域の他の関係機関とのネットワークを構築したり、都道府県や市町村と意見交換したりします。

また、生産性向上における知見を持つ専門家(業務改善のコンサルタント等)との連携を図り、地域における生産性向上を促進します。具体的には、事業所に対するコンサルタントとしての業務委託や、相談対応における助言を求める等が考えられます。

💡 <One Point>
TRAPEは、2023年度青森県介護生産性総合相談センターの業務アドバイザー(外部委託)として窓口様とOne Teamで相談受付対応を行っています。 相談対応についての助言もしますし、助言にとどまらず、サポートも行います。 また、事業所への周知や研修会について、最新の生産性向上の関連情報の収集・提供、協議体についてなど各テーマごとに常に対話を繰り返して、窓口様が常に情報をアップデートできるサポートも行っています。

介護事業所の状況に合わせて多様なサポートメニュー(①〜⑧)を有機的に連動させて、働く職員や利用者がウェルビーイングになるように、職場に余裕を生み出したり(生産性の向上)、職員の働きがいを向上させたり、良いケアを生み出したりする組織づくりを後押ししてあげてください。

また、各One Pointにてご紹介しております「独自の相談受付シート」や「事例資料」について、ご入用の方にはお渡しする事が可能です。当ホームページの「お問い合わせ」よりご連絡いただけますと、頂いたメールアドレスに資料を添付してご返信させていただきます。

さいごに

3回に分けて解説させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?

「もう少しこういったところを深掘りして欲しい」等のご要望あればぜひお知らせください。

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