変化のカギは“納得感”と“体験”にありー小さな成功体験から始まった、介護現場の主体的な生産性向上

変化のカギは“納得感”と“体験”にありー小さな成功体験から始まった、介護現場の主体的な生産性向上

令和6年度 介護職場サポートセンターひろしま「伴走支援モデル事業」実践報告

 介護における生産性向上ガイドライン作成など、2017年から介護分野の生産性向上のためのさまざまな国の施策づくりで中心的な役割を担い、ウェルビーイングに溢れた介護事業所を創出するために「生産性向上」「働きがい向上」「リーダー育成」の3つを一度に実現することができる生産性向上伴走支援サービス「Sociwell(ソシウェル)」を展開している株式会社TRAPE(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:鎌田大啓)は、「広島県介護生産性向上総合相談センター “介護職場サポートセンターひろしま” 」(社会福祉法人広島県社会福祉協議会が広島県より受託)における業務アドバイザーを受託し、広島県内で生産性向上の取組みを行う2つの介護事業所に対して伴走支援を実施し、成果を生み出すことができましたのでご報告させていただきます。

【令和6年度広島県介護生産性向上総合相談センターとは】

 広島県では令和6年7月1日から、社会福祉法人広島県社会福祉協議会が実施主体となって介護生産性向上総合相談センターが設置されました。
 介護生産性総合相談センターは、都道府県介護現場革新会議で示されたビジョンや戦略を具現化するために、戦術(具体的な手段や行動など)・計画(具体的なステップなど)を立てて実践する役割があります。また、介護事業所各々の状況に合わせて、働く職員や利用者がウェルビーイングになるように、職場に余裕を生み出したり(生産性の向上)、職員の働きがいを向上させたり、良いケアを生み出したりする組織づくりを後押しする役割があります。
 介護事業所の状況は様々ですが、どんな介護事業所も取りこぼさないように、介護事業所の状況に合わせて多様なサポートメニュー(①〜⑧)を用いて支援します。

【本事業におけるTRAPEの取組み内容と特徴】

  • 広島県内の介護事業所向けの生産性向上セミナー
  • 生産性向上の取組みを実施する介護事業所の選定支援(広島県内より4事業所、内2事業所をTRAPEが伴走支援)
    • 介護ロボット導入前の土台づくりの取組みも含める
    • 窓口とともに、県内の横展開まで見据えたモデル事業所を一定の選定基準に基づき選定
  • 生産性向上ガイドライン、パッケージモデル等に沿った事業所活動への伴走支援(4〜6ヶ月)
    • 2018年にTRAPEが実際に施設サービス・在宅サービスの介護事業所に伴走支援を行い、そのエッセンスをまとめて作成された「生産性向上ガイドライン」を土台にした「介護ロボットのパッケージ導入モデル」を軸に、TRAPEオリジナルの生産性向上伴走支援サービスSociwellのツールなどを介護事業所の状況に合わせてカスタマイズしてご提供
    • 弊社カスタマーサクセス(担当者)が、オンラインで日常的にプロジェクトリーダーと密な対話を行い、プロジェクトリーダーを孤独にせず改善活動推進を後押し
    • 結果として、定性的・定量的な業務改善効果はもちろん、現場マネジメントができるリーダーづくり、チームビルディング、そして目指す職場に向けた現場の変化を生み出す

【2つのモデル事業所の取組テーマと成果(一部)】 

社会福祉法人 洗心会 特別養護老人ホーム 洗心園

 この施設では、ホールで見守りを担当しているはずの職員が、気づけばその場からいなくなっているという事態が頻発していた。それが、事故やヒヤリハットの大きな要因になっていた。
背景には、「変化を嫌う」職員の存在があった。新しいやり方やルールには抵抗が強く、現場にルールを導入すること自体が難しい。そんな状況の中、リーダーは焦らず、職員一人ひとりと対話を重ねることから始めた。
「なぜいなくなるのか」「どうすれば安心して任せられるか」――丁寧に言葉を交わしながら、見守り業務のルールや役割を少しずつ構築していった。その積み重ねは、確実に現場に変化をもたらした。見守り業務の質が改善されただけでなく、職員同士のコミュニケーションも増加。バラバラだった視線が徐々に同じ方向を向き始め、「みんなで見守る」という意識が育ち始めた。
 取り組みの結果、職員の視野は広がり、ホール全体を見渡す力がついた。今後は、そこで生まれた信頼と連携をベースに、インカムなど新たなツールの導入へと進んでいく。

社会福祉法人 和楽会 特別養護老人ホーム 和楽荘

 この施設では、組織としての「チーム意識」が希薄だった。職員はそれぞれのやり方で日々の業務にあたっており、共通の目的意識は見えにくかった。経営陣はまず、法人の理念と行動指針を見直し、改めて言葉として定めた。重要だったのは、それを単なるスローガンとして掲げるのではなく、「思い」として現場にしっかり届けること。そこから、記録や情報共有といった目の前の課題に、チームとして向き合う取り組みが始まった。情報共有の仕組み自体は以前から存在していたが、使うツールは職員によってバラバラ。連絡ノート、口頭、LINE、介護ソフトなどが混在し、それぞれが自分の方法で運用していた。そこで、現場で扱っている情報やツールを棚卸しし、「整理と再設計」に取り組んだ。
 その結果、連絡ノートを廃止し、介護ソフト「ほのぼの」やLINEへの一本化を実施。情報の流れが明確になり、記録や情報共有の効率が格段に上がった。
 もちろん、現場から声を引き出すのは簡単ではなかった。だが、リーダーが粘り強く職員と対話を重ねたことで、ただ不満や諦めを口にするのではなく、前向きな提案が自然と生まれるようになった。
いまでは、職員自身が課題に気づき、改善に向けて自ら動き出すようになってきている。変化を楽しみ、前に進もうとするチームになってきている。

取組み後の成果(一部)

社会福祉法人 洗心会 特別養護老人ホーム 洗心園

社会福祉法人 和楽会 特別養護老人ホーム 和楽荘

【2つのモデル事業所の職員からの声】

  • 職員が自分の意見を言えるようになり、職員同士の関係性が良くなった。
  • 取り組みを実施したフロアでは、他のフロアと比べて明らかに見守り業務の質が向上している。
  • 事故やヒヤリハットの件数が減少した。
  • これまで「決まっているからやる」という業務の進め方が多かったが、原因を明確にし、皆で話し合うようになったことで、意識が高まり、それぞれの職員が自律的に動けるようになったと感じている。
  • 以前は「遅番は時間になるまで動かない」という雰囲気があったが、今では時間前でも見守りが必要な時には自然に声を掛け合うような関係が生まれている。
  • ノートを廃止してLINEに切り替えたことで、「書くこと」の負担が軽減され、業務の効率が上がった。
  • 職員同士の対話を通じて、記録のあり方や考え方を共有できたのがとても良かった。
  • 誰よりも上司が前向きに取り組んでいる姿に刺激を受け、自分たちも感化された。
  • 上司が一人ひとりと丁寧に対話してくれたことで、「話を聞いてもらえている」という実感が持て、意見も言いやすくなった。
  • 職員同士の対話が増え、新しいことにも前向きに取り組める雰囲気ができてきた。
  • 課題に対して、職員から改善案が出るようになった。
  • 取り組みを通して、「職場が良くなりそう」というワクワク感が生まれ、変化を前向きに楽しむことができた。
  • 今後も、新しいことに挑戦する気持ちを持ち続け、変化を楽しめる自分でいたいと思っている。

【2つのモデル事業所の経営者からの声のご紹介】

社会福祉法人洗心会 
特別養護老人ホーム洗心園
施設長 高垣 恵美子様

 「職員が働きがいを感じ、利用者様へよりよいケアを提供したい」という想いで、令和6年9月13日、みんなで円陣を組み、「We Can Do It!」の掛け声のもとキックオフ宣言を実施、改善活動をスタートしました。
話し合いや、アンケート結果により、ホールの見守り業務を取組み課題とし、職員それぞれが利用者様のことを考え自分ごととして取り組めたことが大きな成果と思っています。
また、伴走支援のアンケートで、「そうなんだ」「そんな思いで仕事をしているのだ」と、私自身いままで気付かなかった職員の思いを知ることができ、残念なところも感心するところもありました。私自身の課題としても受け止めました。
まだまだ沢山の課題を抱えておりますが、職員自らが行った、今回の改善活動を足掛かりとして、働きやすくより良い職場・サービスのための取組みを実施して参りたいと思います。
この機会を与えていただいたことに感謝します。

社会福祉法人和楽会
特別養護老人ホーム和楽荘
副施設長 佐々木 愛子様 

大きな一歩を踏み出す
 「生産性向上」という言葉を毎日のように耳にするようになり、どこか焦りを感じながらも、具体的に何をすればよいのか分からず、不安や葛藤を抱えていました。そんな中で知ったのが、生産性向上伴走支援の取り組みでした。
「とにかくやってみよう!」と一歩を踏み出し、取り組みをスタートさせました。
介護現場は閉鎖的になりがちで、外部からの情報が入りにくいと感じることがあります。しかし、今回様々な視点からの助言を受けながら具体的な行動を共に進めることで、施設内に自然と対話が生まれ、思いを共有し、課題が可視化され、形となっていきました。その小さな変化が、スタッフの姿勢や発言の変化につながり、大きな前進となったことを実感しています。

未来を創るために
 取り組みのスタートとして、改めて Mission・Vision・Value を施設全体で共有しました。「これからの介護を自分たちの手で創り出していく」—それは変化を意味します。そこで、私たちは 「変化を楽しむ」 ことを行動指針に掲げました。そして、その変化を実行・実現していくのは “人” です。私たち自身の未来、大切な人たちの未来を創るこの仕事は、ただの仕事ではなく 「志事」 です。「やりがいと使命をもって働ける職場」を、スタッフ全員で力を合わせて築いていきたいと強く思っています。
この半年間で、私たちは確かに大きな一歩を踏み出しました。
ご協力いただいたすべての皆さまに、心から感謝いたします。
これからも、変化を恐れず、楽しみながら前へ進んでいきます。

【介護職場サポートセンターひろしまからのコメント】


広島県社会福祉協議会 福祉人材課
阿村 謙一様

 広島県では令和6年7月に介護職場サポートセンターひろしま(通称:介サポひろしま)を開設し、生産性向上のため業務改善に取り組む県内の介護事業所のサポートを行っています。
初年度となる令和6年度は株式会社TRAPE(以下、TRAPE)のご協力のもと、県内の特別養護老人ホーム2施設をモデルとして選定し、業務改善支援の取り組みをすすめました。
いずれの施設も自分たちの職場を変えていきたいという現場の介護職員の強い想いを経営者である施設長が応援する形でそれぞれの事業所で課題となっていたことの改善の取り組みをすすめていきました。
通常の介護業務を行いながらの改善活動は現場に大きな負荷がかかることになりましたが、TRAPEのアドバイザーによる細やかな寄り添いにより、取り組みを行った事業所の職員からは「大変だったけど取り組んで本当に良かった!!」、「取り組みをすすめていく中で、職員間のコミュニケーションが高まり、情報共有がスムーズになった!!」という声が数多くあり、伴走支援の目的の一つでもある、事業所の職員自らが考え、改善の取り組みをすすめていくための土台作りとなったのではないかと感じています。
 県内の他事業所に取り組みを拡げることを目的として、令和7年2月に開催した「令和6年度生産性向上普及促進セミナー」において、今年度の取り組みを行った2施設の担当者にご登壇いただき、伴走支援の取り組みを振り返り、その成果を発表いただきました。支援開始時はどこか懐疑的であったり、不安感がある様子でしたが、取り組みを行ったことで得た成果と、その成果を出すまでの「生みの苦しみ」とも言えるプロセスを経験したことで、大きな自信を得られたように感じました。
 令和7年度は3つの事業所を対象として伴走支援を継続していきますが、この取り組みを多くの事業所とも分かち合い、介護の生産性向上に向けた取り組みを加速させていきたいと思います。

※伴走支援を行った2施設にご発表いただいた、「令和6年度生産性向上普及促進セミナー」については介護職場サポートセンターひろしま(通称:介サポひろしま)のホームページで動画をご視聴いただくことができます。

<介護職場サポートセンターひろしま ホームページURL>
https://care-robot.org/topics/news9/index.html

主な事業実績先
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