ストーリー・事業意義
介護サービスの供給を支える人材不足は既に危機的状況にあり、今後も増加し続ける要介護・要支援認定者が必要とするサービスを提供できない自治体が増え出しています。
ただ、もう一度真剣に考えたいのは、その方々は本当にそこまでの介護が必要なのか、ということです。
重度化を防ぎ、介護サービスが必要になる前の段階で、その方の自立をサポートし、もう一度自信をもって、元の暮らしに戻っていただくことはできないのか、という大事な問いです。
この問いに対して、TRAPEは、
寝屋川市の短期集中通所サービスのモデル事業が、その参加者の身体機能の向上、社会参加の増加、そして介護サービスを利用せずに日常生活を維持できること、に寄与する効果を科学的に検証・評価することに挑戦しました。
プロジェクト名 | 寝屋川市と医療経済研究機構との介護予防に資する活動等の共同研究PJ |
協定締結 | 2018年2月2日 |
対象事業 | 寝屋川市 総合事業における短期集中通所サービス モデル事業 |
事業参加者 | 寝屋川市内の要支援認定者 421名 |
研究タイトル | 寝屋川市が実施する介護予防・日常生活支援総合事業を通じた予防理学療法の 活用がその後の虚弱高齢者の身体機能向上、社会参加そして 介護サービス未利用状態の維持に与える効果の評価 |
研究手法 | ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial) |
研究主体 | 一般財団法人 医療経済研究機構 |
共同研究機関 | 千葉大学、成城大学 |
助成内容 | 予防理学療法の確立を目的とした大規模臨床研究に対する研究助成 |
助成主体 | 公益社団法人 日本理学療法士協会 |
成果・生み出した価値
- リエイブルメントサービスに参加いただいた方の一定割合が、「何年も介護サービスを利用していた状態」から「私は自分で生活できる。介護認定は要らない。」という状態までになり、ご自身の生活と人生を取り戻すことができた(高齢者の可能性を実現)
- これは介護の専門職が自分たち目線の”与える介護・サービス”から脱却し、ご本人中心(Person-centered)にその方のWell-Beingを目指していく「リエイブルメント」を実践することの意義を示した
- 今回実践した自立支援の本質は、単に運動・口腔・栄養などの生活行為力の向上ということではなく、面談や日記により日々の対話を繰り返すことで高齢者の「ヒト」を探求し、その可能性を見出し(アセスメント)、諦めと可能性の間で揺れ動く感情に対して、承認と後押しで働きかけることにより意欲を引き出し、自立の舞台となる社会的役割の再獲得へと繋ぐ(リエイブルメント)というものであった
- RCT(ランダム化比較)により、リエイブルメントサービスに参加された方々と参加されなかった方々を比較検証したところ、リエイブルメントサービスの有効性が統計的にも有意であることが示唆された(客観的・科学的エビデンス)
- 自立支援の本質を行政から事業者に至るまで浸透し、適切な事業プロセスをデザインし、着実に実践することで、「介護サービスを利用しないままで日常生活を送ることができる元気な高齢者を増やすことができる」ことがわかった(介護行政のリデザイン)
- このモデル事業・サービス成果と、そのために必要な要素を特定できたことで、今回の事業・研究が、日本の社会保障制度の持続性という主要課題を可能性へと転換できることを示せた(政策の方向性)
成果物
- 寝屋川市ホームページ
「介護保険の総合事業(モデル事業)における実証事業」 - プレスリリース
「要支援高齢者に対するリハビリテーション専門職が主導する短期集中型自立支援プログラムは、介護保険サービスからの卒業を促進〜大阪府寝屋川市における要支援高齢者375名に対するランダム化比較試験〜」 - 英文掲載記事
International Journal of Environmental Research and Public Health 16(20), 3954,(2019)
「Effects of Reablement on the Independence of Community-Dwelling Older Adults with Mild Disability: A Randomized Controlled Trial」 - 研究成果報告書
・医療経済研究機構HPでのリリース
・報告書概要pdf - 内閣府政策統括官(経済財政分析担当)
政策課題分析シリ-ズ15「要介護(要支援)認定率の地域差要因に関する分析」
(P23〜 介護分野におけるEBPMのフィールド実験例として寝屋川モデルを詳述) - 最終報告会
・開催概要
・TRAPE説明資料
7.セルフマネジメントシート